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1日3食の規則正しい食事と連動して起こる大きな代謝の流れは、食事のたびに体内に供給される大量のグルコースをグリコーゲンと脂肪に作り変え、体内に貯蔵する流れである。反対に絶食と連動するのは貯蔵した栄養素を分解して利用する流れである。貯蔵の代謝系は、自律神経系の副交感神経系の働きと同調して活性化される。一方、分解の代謝系は、交感神経系と同調して活性化される。絶食が習慣的になると、脂肪の分解に働く酵素の遺伝子発現が亢進し、体質は痩せる体質へと変化する。 栄養価の高いたんぱく質(=良質たんぱく質)とは、より少ない摂取量で必要量をまかなうことができるたんぱく質のことである。動物性食品のたんぱく質は、必須アミノ酸をバランスよく含み、質の良いたんぱく質であるが、それはたくさん食べると良いことを意味するのではなく、より少ない摂取量で必要量をまかなうことができるたんぱく質を意味する。アメリカの著名な栄養学者T/コリン/キャンベル博士の研究の目玉は、動物性たんぱく質を必要量以上に摂取すると、がん発症のリスクを高めるということの発見である。キャンベル博士が指揮して、中国の農村部で実施された史上最大規模の栄養疫学研究「チャイナ・プロジェクト」の結論は、自身の動物実験の結果を裏づけたばかりでなく、動物性食品の過剰摂取は、がんを含むあらゆる生活習慣病と深く関係しており、「プラントベースでホールフード(植物性食品を中心に未精製・未加工の食物)の食習慣こそが、現代人をあらゆる生活習慣病から救う近道である」ということである。 オートファジーは、絶食時に自分自身の細胞成分を分解して栄養素を獲得し、生き延びるための仕組みである。同時に、生体内に生じる老化たんぱく質や老化した細胞小器官を分解除去することによって細胞内成分の品質管理に寄与している。だから、オートファジーは適度に働かせる方が良い。ときどきの断食は、オートファジーを働かせることを介して動物の健康の保持・増進に寄与し、その結果として動物を長寿に導く。野生の動物のように、「自然の摂理」に従って生きていると、ときどきの断食は避けられないので、オートファジーが必須の仕組みとして進化してきた。オートファジーを適度に働かせる生き方(食事法)は、「元気で長生き」の秘訣である。 自律神経系の働きは、「心とからだをつなぐ仕組み」である。心のストレスは、自律神経系のリズムを交感神経過剰優位に傾け、血流障害や顆粒球の過剰反応による組織破壊を起こし、身体を病気に導くことになる。現代医学は、検査をし、手術をし、薬物を処方することには熱心であるが、ストレスが病気をつくるということに思いがいたっていない。 食事のほんとうの役割は、副交感神経反射を誘導し、ストレスによる交換神経優位の体調を副交感神経優位に変換することによってストレスを減らし、人を健康に導くことである。ただし、食事のみにたよってストレスを解消しようとすると、過食になって肥満になり、かえって健康を損なう可能性もあるということを認識する必要がある。